2021年度書籍目録

(全部で15冊)

黯(くら)らかな静寂(しじま)、すべて一滴の光　奥間　埜乃　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×130）　118ページ　　2021年12月10日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-86725-022-8 C1092 \2600E

夜、眩暈、そして耳鳴り――
人称の混濁の底へと沈んでゆく［わたし］。崩壊はしない
――覚えておいてハニー、あれが日付変更線よ

経験の定義あるいは指の痛み　新延　拳　
　　装幀=亞令
　　A5変（196×140）　102ページ　　2021年11月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-021-1 C1092 \2500E

罐蹴りにも飽きて…陽のあたたかみが残っ
ているブランコ…少しこいでみる、ゆれて
きしむ音…迷い仔犬…かたっぽだけ落ちて
いる手袋…ホケットの中の木の実…そう…

私はただここにいる
生身の自分として
等身大の哀しみとして

羊歯の谷間に　相澤　啓三　
　　装画=建石　修志
　　A5変（210×140）　158ページ　　2021年10月30日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-86725-020-4 C1092 \2800E

わかれがたい想いをいだいて、
　　　　　　　　　おもむく。
　　　生きる時をいとおしむ。
きみとともに歩き回りしはうつつともピラネージのローマ遺跡とも過ぎては思ふ
眩しくも羊歯の谷間にわたる風のあるかなきかに昨日(きぞ)は顕ち来る
腕をからげ合ひしか　わらびの少年らその残像はかたくほぐれず
高原から高原へと尾根路行く散骨人(びと)は虹に包まる

からすのえんどう　阿部　はるみ　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×134）　102ページ　　2021年10月5日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-019-8 C1092 \2500E

輪ゴムが
路上に落ちている
三日前と同じところに―記憶の深みから浮上する、
その一瞬。整序することの困難な無数の瞬間。けれ
ども忘失を拒むいくつかの情景たち。透徹するまな
ざしとやわらかな情念だけがそれに気付くのだろう。

第29回丸山薫賞受賞

息の重さあるいはコトバ五態　服部　誕　
　　装画=石阪　春生
　　A5　104ページ　　2021年8月31日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-018-1 C1092 \2500E

風が吹き霧が立ち
少年を世界から遠ざける
通りすぎてゆく少年
永遠に歩きつづけるもの
思索の周縁をゆっくり旋回する。いく
つもの中心をみつけ、みつめ、めぐる。

匙　青山　雨子　
　　装幀=亞令
　　A5変（196×136）　106ページ　　2021年8月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-017-4 C1092 \2500E

いないと思ったら
ここにいると思ってくれ
　　　　　　生きている姿は見せない
　　　　　　　　　　　　見せないが
　　　　　　　　　　　どこかにいる
　　　　　　くずれていく
　　　　　　くずれていく
　　　　　　　　　　　波

眠れる花　村岡　由梨　
　　装画=一条　美由紀、鈴木　眠　装幀=亞令
　　A5変（196×134）　204ページ　　2021年7月30日発行　定価2970円　(本体2700円)　ISBN978-4-86725-016-7 C1092 \2700E

自分の体の一部なのに、自分の思うようには動かせない、
もどかしい6本目の指。
思い切ってナタを振り下ろしたら、
切り裂くような悲鴫をあげて、鮮血が飛び散った。
真っ赤に染まった5本指は私。
切り落とされた6本目の指は誰？
そんな風に、痛みで私たちは繋がっている。

雨に翳り　大高　久志　
　　装幀=亞令
　　A5変（198×148）　110ページ　　2021年7月20日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-015-0 C1092 \2500E

人が生きようとしていた。暗い夜にとぼしい明かりを灯し
て。もがき、身をよじり、そぼふる雨の中を歩きつづける。
歩きつづけようとしている――雨はあがるかもしれない。

「メランコリア」とその他の詩　池澤　夏樹　
　　装幀=亞令
　　A5変（198×136）　78ページ　　2021年7月5日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-86725-014-3 C1092 \2400E

視界の隅をかすかに揺らし遁げてゆく気配
ぼくは追う…気配はまた遁げてゆく
すっくと立つ樹に吹きよる風
ひるがえる葉裏から若い光が
たわむれ遁げてゆく

心という砂漠の井戸から
詩のための水を汲む

フランチェスカのスカート　高柳　誠　
　　装画=勝本　みつる
　　A5変（210×128）　140ページ　　2021年6月5日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-86725-013-6 C1092 \2600E

かけてゆく少年――

星降る丘にのぼり
父の星、母の星のまたたきをみつめる
ひとりぼっちの少年。
どことも知れない遠くから届く叔父さんの手紙。
しずかに空から舞い落ちてくる夢の種。
少年は朝の光が影をつくる街へと
また、かけだしてゆく。
誰のものとも知れない記憶を
しっかりと胸に抱いて…

奈良に吹く風　服部　由貴　
　　帯=中田　剛　装幀=亞令
　　B6変（172×108）　82ページ　　2021年5月25日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-86725-012-9 C1092 \2000E

松影を踏み尼寺の雛を見に

徐々に私の心の奥に浸潤してきた句。
やさしく手をひかれるままにしばらく
ついてゆくと、そこに不思議な景がひ
ろがっているといった印象。此の世と
彼の世の境を踏んだか。―――中田剛

お山焼白毫寺から手伝ひに
お水取り生駒の竹も運ばるる
塔いつもゆふぐれのいろ初桜
朝早くささゆり届く開山忌
二の鳥居より虫の闇はじまりぬ
綿の花橘寺も荒れにけり

朝　朝倉　勇　
　　栞=高橋　順子　装画=朝倉　勇　装幀=亞令
　　A5変（178×148）　92ページ　　2021年5月15日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-011-2 C1092 \2500E

水辺のしめった土の上に
ちいきな足あとがついています
鳥が歩いていったのですね
百グラムほどの重みを
地球は感じてあげていたのですね
朝はやく

間氷期　是永　舜　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×124）　146ページ　　2021年4月15日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-86725-010-5 C1092 \2600E

童子ふたり梅の林に遊び消ゆ
荒くれの雛の間に入る忍び足
行く春や子猫の骨のか細さよ
うたれ哭けやさしき夏の雨脚に
麦揺れてゐる少年の日の吐息
海月知る海鼠の恋や間氷期
冬鷗ヒトの萎びた背を嘲ふ

俳句が映す宇宙

Works　朝妻　誠　
　　帯=川口　晴美　
　　A5変（190×138）　62ページ　　2021年3月15日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-86725-009-9 C1092 \2400E

これは第一詩集。
だが彼はもうずっと前から、女あるいは少女の姿を
した“詩”に拐われ、こわれたオルゴールの櫛歯の
ように繰り返しあらわれては消えることばを追いな
がらどこにもない街をさまよっていたのではないか。
魂の彷徨をたどる散文詩集――川口晴美

白石かずこの世界　性・旅・いのち　　水田　宗子　
　　カバー写真=白石　由子　装幀=亞令
　　四六変（190×126）　240ページ　　2021年2月25日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-86725-007-5 C1095 \2800E

コトバ――
出逢う。交わる。
いだく。生きる。

白石かずこは、ひとりの人間であり、詩人である――迷い、もがき、突進する。
奔放な言動で袋叩きの目にもあう。けれども生きる。抗いつづ
ける。表現することをやめない。地球の遠い片隅まで身をはこ
び、手放してはならないものを劇しく見つめ、ふるえる息づきと
鋭い歓びと際限のない苦悶を人たちとともにする。その心の共
振だけを唯一の頼りとして、コトバを繰り出し、生をいとおしむ。

白石かずこは第二次世界大戦敗戦後からの日本現代詩
を代表する詩人の一人である。女性詩人の一人である。
その事実を出発点に、白石かずこの詩世界・表現行為に
伴走し、その思考と蛮勇ともいえる生き方に同行する。

(全部で15冊)

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